一冊読了です。前作と同じ速さぐらいで読み終わりました。今回はこちら↓

「いけないⅡ」著・道尾秀介
先日、かの正和堂書店さんで購入した本の一冊がこちらでした。
選んだカバーはインスタントカメラ。
写真がキーになっているこの本にたまたまかけてもらったカバーですがインスタントカメラはピッタリだったね!ということで 笑
せっかくなのでセットの栞と一緒にした状態も↓

マジかわいい。使いまわしたいけどボロボロになっちゃいそうなのでこのままカバーだけ飾ることにします。
あらすじ
前作と同じように短編が3つ展開された後、最終章で一つに繋がるスタイルです。
各章の主人公として
・行方不明になった姉の足取りを追っている女子高生の妹
・仲間内の少年1人にいたずらを仕掛けようと目論む小学生の男児
・息子を手にかけたと自首してきた老人
となっています。
もちろん他にも主要登場人物が幾人か出てきますが、基本的に前作を読んでいなくても読める内容となっています。
ただ、前作を読んでいるともっと世界観が掴めるかな?という点はあります。
前作との繋がり
話の内容的には舞台も全く違う場所ですし、話の繋がりはありません…とはいいますが。
前作に出てきていた隈島刑事が今作でも出てきます。
これにはちょっとビックリしました。
隈島刑事が出てくるということは…前作より時系列は前の設定なのでしょう。
特に同一人物という表記はありませんが、隈島という苗字はそうそう多くないと思うのでおそらく同じ人だと思います。
前作を読んでいればここら辺はちょっと「お」となる点かもしれませんね。
写真を見るまでが章の終わり
今作も各章の最後に写真が1枚入っています。この写真ですが、読む前に見てもサッパリ意味が分かりません 笑
章の内容を読み進めることで写真の意味が最後に分かるような被写体が写っています。
ただ1章目だけ冒頭にも写真が1枚入っています。こちらはですね、読み始めに見るべき1枚だから冒頭に入っていると思うのですが、これも読み始めと読み終わりでは違った意味が見えてくるようになっていました。
で、この写真の意味を読者自身が紐解くことで各章の真相が見える仕組みになっています。
一応ミステリー慣れされてる方は割とすぐ気づけると思うんですが、いまいち意味が分からん…という方のために今作からヒントサイトが設置されています。
サイトに飛べるQRコードが載ってますので、写真を見ても分からない時に活用すればヒントが見られます。
流石にヒントサイトを見れば真相が見えてくると思います。
とはいえ、さらに考察されている本読み系ブログさんもたくさん検索すれば出てきます。
なので、あえて考察は抜きで感想を書きたいと思います。
各章の感想など
あんまり書いちゃうとネタバレになりかねないので、それぞれ軽くだけ…。
まずは
1章目:明神の滝に祈ってはいけない
各章のタイトルも結構核心に迫っているタイトルだなとは思います。
明神の滝に「どうして」祈ってはいけないのか?ということですね。
ここが全体を通してキーになっているとは思うのですが、まぁでも…願いが叶うと言われている滝だったら藁にもすがる思いの人は願い事をしようと思うのではないかなぁ。
行方不明になった姉も、姉の帰りを願う妹もどっちも良い子だけにさ、この子たちには救いがあってほしいなと思う1章だったと思います。結末と最後の写真を見ればそれも…ね、アレなんですが(濁すの下手くそかw)
でも年齢的には親側に近い歳なので、両親を思うとより一層切なくなる内容だったかな。
2章目:首なし男を助けてはいけない
これが一番最後の写真を見てゾッとしたお話でした。
ヒィ!ってなったかな…というのも、章の最初に写真ちらっと見たんですよ。ズルです。ズルをしましたが、やっぱり読む前に見ても意味不明だったんですよねぇ。
だけど読んだ後に改めて見るとゾワワワ!となりました。なるでしょ、これ。
とはいえ、主人公が小学生の男の子だったので、彼には不幸にはなってほしくなかった。
結果的に彼の行く末は最終章で明確になるわけですが、わずか10歳前後の子供が抱える心の傷としては相当に負荷が大きいだろうなと想像すると、これまた切なくもなるのでした…。
メインの事件?として主人公・真のお爺さんにあたる人が過去に事故で亡くなっていることが主軸だったわけですが、ここらへんの真相はなんとなくすぐ分かるかと思います。
だけどその後どうなるか…ってとこですよねぇ。
3章目:その映像を調べてはいけない
これ、ぶっちゃけどの映像のことを言ってるのかなぁと最初悩みました。
というのも録画された映像が2つ出てくるんですよね。
そこがミスリードのひとつとして用意されたものだとは思いましたが…。
この3章目の事件は結構真相に真相が隠されている二重ミステリー的なものを感じて(言葉として正しいかどうか分かりませんがw)「おぉ‥」となりました。
こちらも主軸に置かれた息子の事件も実際に犯行を犯したのは誰なのか…そこは割と気付きやすいかなと思ったんですが、そこからさらに真相があるわけで。
というか1章目から3章目まで全部通して中年期にかかる男性が不幸のどん底に落ちている印象が強かった。
でもこれ、いつ誰がこうなったっておかしくないんじゃないかなとか考えてしまいました。
もっと良い方法があったろうに、どうしてこうなってしまったんだろう…そんな印象ばかりが続く3章だったかなと思います。
最終章:祈りの声を繋いではいけない
そして最後に繋がっていくわけですが。
最終章からの感想と見解、考察(とまでいかないと思うけど)はネタバレ不可避なので下の方に置きますね。
未読の方はご注意ください。
ミステリーの感想ってネタバレ不可避で書くの難しいですよね(申し訳なし…)
↓↓ということでそこそこネタバレ含みます↓↓
考察というか、まぁ感想なのですが。
結局のところ姉の緋里花は変わり果てた姿で発見されることとなり、妹の桃花も…。
これさぁ、両親にとってどれだけ心が抉られたことだろうと思ってしまって、まずそこがとにかく悲しかったです。
姉の緋里花が行方不明になっただけでもお母さんは生きた心地しなかったと思うんですよね。
その後さらに妹の桃花までもが1年間行方不明になっていたわけですよ(1章目の大槻の視点は桃花視点から1年後の時系列なので)
桃花に至っては冷凍された姿で見つかっていますから、両親からすれば「どうして妹まで」という思いだったのではないかと思います。
だけどまだ緋里花は見つかっていない。そこに一縷の望みを賭けていたと思います。
だから桃花の携帯番号をそのまま使って緋里花のスマホに定期的に電話をしていたわけですからねぇ…。
全ての真相を鑑みれば、母親にすれば自分の病気は治らなくても良いから娘たちには健康に育って大人になっていって欲しかったのではないかと思います。
そんな母親の病気が治ってほしくて緋里花は明神の滝に行って願ってしまった。
桃花はそれを分かった上で姉が見つかってほしいと明神の滝に願ってしまった。
母親としてはそのせいで2人とも見も知らぬおっさんの手にかけられてしまったわけですがら、ふざけんな!だと思います。
それよりもただただ大人になって幸せな未来を進んでもらいたかったろうに…とか思っちゃうんですよね。
それが分かるからこそ、孝史の両親は床下から見つかった緋里花を警察に見つけてもらえるよう森に埋めたわけですが…。
我が子が行方不明のままであるより、見つかってもらった方が良いと「親の立場」として思ったのでしょう。
でもなぁ…そうかぁ、そうなるのかぁ…と思ってしまいました。
人によれば「イヤミス」になるのだそうで、私はそこまでイヤミスさを感じなかったものの、なんだか切なくて悲しくて救いがないなぁとは思いました。
ただ、唯一の救いとして真の声が戻ったことでしょうか。
真は自分のせいで伯父が命を絶ってしまったと思っているがゆえに声が出ませんでしたね。
だけど智恵子を救ったことで声が出るようになった。自分で抱えていた贖罪を大槻と同じように滝に身を投じることではなく智恵子を救ったことで成し得たからだと思います。
実際のところ、真が追い詰めたように見えつつも果たして本当に原因は真の言葉で伯父が命を絶ったのかと思うと一概にそうでもないように思いましたし…。
そこは難しいところですが。
最終的に智恵子を救ったことは結果的に良かったと思います。
なぜなら智恵子が命を繋いだことで、隈島に全ての真相が明かされるわけですから…。
滝に願った人たち
これは考察サイトやブログを書かれてる方も同じように挙げてる人がいたと思いますが、自分メモ程度にまとめたので…。
まず、結果として明神の滝に願ったことは全員叶っています。
・緋里花:〈願い〉→母の病の完治 〈犠牲〉→自らの命(てりべあ先生はミスリード)
・桃花:〈願い〉→姉が見つかること(“無事に”とは願っていない) 〈犠牲〉→自らの命
・真:〈願い〉→声が出るようになること 〈犠牲〉→大好きだった伯父の命
・智恵子:〈願い〉→息子を手にかけてしまいつつ罪を償うことのできない現状から解放されること 〈犠牲〉→家族の命
そして最後に
・隈島:〈願い〉→事件を自分が解決すること 〈犠牲〉→自らの命
かなと個人的には考えました。
明神の滝に願いをすると、自分の大切なものが犠牲になるというのも事実だったんだと思います。
そして真は先に「大切な伯父の命」が犠牲になっています。「伯父さんを生き返らせてくれ」が願いなんじゃないかとも思ったのですが、一度失われた命を戻すことはいくらなんでも無理でしょう。
だからその前に願った「声を出せるように」が叶ったのかなと思います。
そして隈島です。
この隈島も滝に願ったことが最後の最後で叶っています(そこら辺は考察サイトなどで分かると思います)
隈島の願いが叶ったということは隈島も何かしらの犠牲を支払うということです。
ここで前作を読んでいれば明確ですが、隈島も先の未来で事故にあって殉職してしまいます。
これが代償だったのかなと思ったんですが、2作目の最初の方で隈島は兄を殉職で失っていることが判明しているんですよね。もしかしたらこれが代償だった可能性もあるかなとあとで気づきました。
どちらにせよ隈島も願いの代償を払ったということでしょう…ね。
まとめ
個人的には前作の方が体験型ミステリー感を感じて遊べたかなと思いましたが、今作も十二分に楽しませていただきました。
ヒントサイトも作って下さっていて助かりましたし…こういった「写真を見ることで真相を紐解く」「読者参加型ミステリー」って…本当によく思い付かれるなぁと 笑
もうその時点でとにかく凄いなぁ尊敬だなぁと思うのですが、それに劣ることなく内容も面白い。
そしてさっさと代表作を読めよ自分!ってなりました…すみません…。
必ず読みます!
積読のままになっている道尾秀介さん作品は2冊ありますので、どちらかを読もうかな。
と思ってはいるものの、次はすみません久々の中山七里さんに入ります。
こちらも正和堂書店さんで購入したので、カバーがぐちゃぐちゃになる前に読んでおきたい 笑
ということで次は「いまこそガーシュウィン」の感想になります。
久々の岬シリーズですが、文庫化されてましたのですぐ手に取りました。
岬シリーズはまるで曲が聴こえてくるような表現力でとても読んでいて心地よさを感じます…楽しみ〜