ライブとか本とか猫とか

ライブとか本とかの感想

【読了】「琥珀の夏」辻村深月

前回読んだ「リボルバー」からだいぶ日が経ってしまいましたが本は読んでおりました。

毎度のご挨拶になりつつありますが、読むの遅いんです😂

やっと1冊読了です。

今回はこちら↓

琥珀の夏」著・辻村深月

文庫化してましたので(10月終わり頃です)手に取らせて頂きました。

帯を見た感じ今回もミステリーかな?なんて思いましたが全く違いました…個人的に思う辻村作品はミステリーかヒューマンドラマに二分化されると思うのですがこちらは後者でした。

あらすじ

とあるカルト団体の敷地跡から白骨遺体が見つかります。

主人公の弁護士・近藤法子はかつて子供時代にこのカルト団体の夏合宿に参加した経験があり、このニュースを受けて胸騒ぎを覚えます。

この白骨遺体は自分の知っている、あの子なのではないか…?

忘れかけていた30年前の思い出を紐解く中でさまざまな思い出と共に友情と罪が明確になっていきます。

 

なんて書くとミステリーっぽいんですが、若干のミステリーは孕みつつもミステリー小説ではありません。ヒューマンドラマ(って呼んでいいかも分からない)です。

世情を絡ませた内容

おそらくこちらの本が刊行された時、まさに現実社会でも問題が浮き彫りになりつつあった某宗教団体の社会問題を彷彿とした題材なのではないか…と思います。

そこから着想を得られたのかどうかは分かりませんが、あくまで作中に出てくるカルト団体を通して作者が伝えたかったものは何なのか、というところに着眼点をおかねばならない作品だとは思いました。

あくまでフィクションです。

ですが、現実的に起こり得るのかもしれないと思えるから真摯に向き合うべき問題が提示されてるんだなと思います。

私の小さい脳みそでは作者が訴えたかった問題提示を理解できなかった…というのが最初の感想でした。

けど、「分からない」で済ませてはいけない社会問題を提示されているのは分かった。

 

最初のあたりは子供時代の視点が中心に展開していくんですが、大人になった主人公たちの視点が後半にはメインになっていきます。

そういった叙述の中で読み手の私も子供時代に見えていた周りの大人たち、大人になってから見えてきた大人の事情、色々複雑な事柄が見えてくるような気分でした。

ネタバレ感想

ちょっとこの作品、ネタバレに触れずに感想を述べるのは難しいのでネタバレありきで今回書きます。未読の方はご注意ください。

 

作中に出てくるミライの学校ですが、最初の方だと「自然の中で子供に自主的に考えさせる力を身につける学校」として確かに良い教育環境と教育方針だと思わされます。

ただ、読むにつれて「おや…?」と疑問が浮かんでくる。

段々とそのモヤモヤと感じていた疑問のようなものの正体が明確になってくる。

 

私は子育て経験がないので、おそらくそれも相まってこの辺の問題にちょっと分かりづらくなってるのかもしれません。

ただ、やっぱり私も思うんですよね…子供には親が必要なのではないかって。

もちろんいつの日か親離れをしなければならないですし、いつの日か大人になっていかなきゃいけない。

自主性を育てることはとても素晴らしいけれど、ミライの学校で育つことでミカは誰よりも早熟に大人になってしまったんですよね。

一番近くにいて然るべき親と過ごせなかったせいで逆に子供だったミカが年齢に相応しくない精神的大人になってしまった。

ヒサちゃんも早く大人になってしまった。けれどミカはさらに進んで大人になってしまったせいで事件が起こってしまった…ということですよね。

つまり大体当時11歳ぐらいの女の子だけど、ヒサちゃんは高校生〜大学生ぐらいの知識を身につけてしまったし、ミカに至れば30歳〜の精神的大人になってしまった。

まるで真相シーンを読んで感じたのがヒサちゃんは女子高生、ミカは30歳以上の大人のように思えました。

 

ミカは相当苦しんだろうなと思います。

両親は近くにいるのに「お父さん、お母さん」と呼べず甘えることもできない。

周りの綺麗事を言ってくる大人の本性はもう見えて分かってしまうぐらいにミカの精神は大人にならざるを得なかった教育環境。ただしミカにその自覚はありません。

〈問答〉を通して誘導されているのが分かってしまっている。けれどミライの学校から離れることが出来なかったのは子供だったから…

 

なのかなと思いました。

なんかとっても複雑なんです。私もうまく感想が書けません。

だけど、やっぱり思ったのは子供には甘えられる両親がいること、これが何よりも1人の人間を成長させるのに最初に必要不可欠な存在なんだということでした。

 

世の中複雑な事情があって、それが叶わない方もたくさんおられるわけで、いわゆる毒親から解放された方が良い子供もいるわけで。

でも子供って、大人の事情に一番に巻き込まれて逃げられない存在なんですよね…。

自力でどうすることもできない。

未来を託される子供たちを今を生きる大人がどうサポートし、育てていくのか…ってものすごく大事なんだなと思いました。

「子供は国の宝」ってこういうことなんだなと。

言葉にするには難しいけど、考えさせられる内容の本だったと思います。

で、やっぱり辻村深月さんの本はいいなぁ、好きだなぁと思いました。

手に取って良かったと思いますし、こちらの本は数年後に再読すべき本だと予感しています。

数年置いて再読した時に違った見え方がする本じゃないかな…。