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【読了】「ティンカー・ベル殺し」小林泰三

最近更新してなかったですが一冊読み終わりました。

「ティンカー・ベル殺し」著・小林泰三

このシリーズたまたま本屋で見かけてから通して読んでいたのですが、このティンカー・ベル殺しで一応完結です。

作者の小林先生が急逝されたので、そういう意味では未完の完結ということになります。

 

このシリーズで私は初めてと言って良いのですが、いわゆる「特殊設定ミステリー」を知りました。

説明するとすごく長くなるので、ぜひ1作目の「アリス殺し」を読んでいただきたいのですが、特殊設定ミステリーでありタイトルから分かるようにファンタジーの世界が舞台になります。

なので魔法も使えるし言葉を話す動物も出てくる。人間のように動く人形なんかも出てきますし、そもそも主人公のビルは蜥蜴ですがしゃべりますw

 

おとぎ話の設定の世界とクロスオーバーで現代の日本も出てきます。

おとぎ話の世界と現代では登場人物それぞれがアーヴァタールという設定で、いわば現代社会の登場人物が夢でおとぎ話の登場キャラクターになっているっていう感じです。

でも面白いことにあくまでも本体は「おとぎ話の世界」の方なんですよね。

だから現実世界でいくら命を落としても夢側(というべきかどうなのか…)のおとぎ話の世界軸で生きていれば現実世界の死は無かったことになるんですよ。

そこら辺も特殊すぎる設定で、おとぎ話側の世界で殺人事件がおこり、それを主人公の井森君(夢では蜥蜴のビル)が解決していくミステリーとなります。

夢側(?)のおとぎ話世界で殺された人は現実世界では事故とかで亡くなったりもします。

なので犯人探しはあくまでもおとぎ話側の世界で展開します。

が、アーヴァタールを持っている現実世界の人物は記憶を共有してるので、現実世界側でも事件解決をしていく手がかりが発生するという…。

 

最初の「アリス殺し」を読み進めているときは「特殊設定ミステリーだし魔法も使えるし不思議な世界観が成り立つなら何でもアリやん!」と思って疑って読んでたんですが、これがね、ちゃんと特殊設定ミステリーでありながらまっとうのミステリーなんですよ。

解決編を読み進めているとスッキリ解決していくミステリーになってます。

これ本当面白いシリーズだなと思って、続きが出るのを毎回楽しみにしていました。

 

現時点で刊行されているのは「アリス殺し」「クララ殺し」「ドロシィ殺し」と最後の「ティンカー・ベル殺し」です。

あとがきで編集の方が書かれていたのを見れば、本来ならこのあと「かぐや姫殺し」「赤毛のアン殺し」ときて完結?で「鏡の国のアリス殺し」で終わる予定だったんだなと思います。

作者の小林先生もプロットのようなものは頭の中で出来上がっていたようです。

 

主人公の蜥蜴のビルは不思議の国の住人なんですが、「アリス殺し」の最後で不思議の国から出て色々とおとぎ話の世界を旅しつつ不思議の国に戻ろうとしてるんですが、結局ビルは不思議の国に戻ることのないまま終わってしまいました。

「ティンカー・ベル殺し」の終わり方も次につながるような終わり方してるんですよね。

だからやっぱり次の「かぐや姫殺し」も読みたかったし、ビルがどういうふうに旅を終えるのかも知りたかったなと残念で仕方ありません。

 

ただそれを除いても本当に面白いミステリー作品だと思います。

個人的にはオススメなんですが、ちょっと描写がなかなかエグいwとこもあります。

そういうのが苦手な方には厳しいかもしれないけど、内容と設定が面白いので読んでみてほしいなぁと思う作品です。ぜひ。